相続した土地の場所が分からない?名寄帳の活用でスムーズな売却へ
相続した土地がどこにあるのか分からない——。
売却を検討しているにもかかわらず、何から始めればよいのか分からず、手が止まってしまう方は多くいらっしゃいます。特に、何十年も利用されていない土地や、複数の自治体にまたがる不動産を相続した場合、所在不明・登記未変更といった状況も少なくありません。
本コラムでは、不動産売却の第一歩として重要な「名寄帳(なよせちょう)」の取得と活用方法、そして売却に向けた調査・準備のステップを初心者にも分かりやすく解説します。
名寄帳とは?相続土地調査の出発点
名寄帳とは、市区町村の税務課・資産税課が管理している資料で、特定の所有者がその自治体内に持つ土地・建物を一覧化したものです。
登記簿と違い、「所有者単位」でまとめられている点が大きな特徴です。
たとえば、被相続人が同じ市内で複数の不動産を所有していた場合、その市区町村の名寄帳を取得するだけで、不動産全体の所在や概要が一目で把握できます。
ただし注意点もあります。
名寄帳は市区町村単位での管理となっているため、他の自治体に不動産がある場合は、それぞれの役所で個別に申請が必要です。
名寄帳の取得方法と必要書類
名寄帳は以下の3つの方法で取得可能です:
- 市区町村役場の窓口での申請
- 郵送による申請
- 一部自治体ではオンライン申請(要確認)
申請時には以下の書類を準備しましょう:
・本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
・被相続人との関係を証明する書類(戸籍謄本や遺言書の写しなど)
・委任状(代理人が申請する場合)
郵送やオンラインで申請する場合は、手数料の支払い方法や返信用封筒の有無など、自治体ごとに異なるため事前確認が重要です。
名寄帳から読み解ける情報とその活用法
名寄帳には主に以下の情報が記載されています:
・所在地:市区町村・大字名など
・地番:土地ごとの番号(住所とは異なる)
・地目:宅地・田・山林などの用途分類
・面積:平方メートルで表示
これらの情報をもとに、次のステップとして「登記簿」や「公図」「地積測量図」などと照合していくことが重要です。
特に「地番」は登記簿とリンクする重要な識別子であり、現地特定や境界確認の出発点となります。
名寄帳取得後の調査ステップ
名寄帳を取得したあとは、次のような調査を進めましょう:
【現地確認】
- 土地の利用状況(駐車場になっている、誰かが使っている等)
- 建物の有無・老朽化の程度
- 境界杭の有無、隣地との境界状況
【権利関係の把握】
- 他の相続人の共有状態
- 抵当権や地役権の有無(登記簿で確認)
【法令・制限の確認】
- 再建築可否(接道義務など)
- 農地法、都市計画法、用途地域による制限
相続した土地を売却する前に押さえるべき注意点
1. 相続登記が必要
2024年4月から「相続登記の義務化」が施行されました。
名義変更を行わないと売却ができず、3年以内に行わないと過料の対象になる可能性もあります。
2. 相続人間の合意形成
相続人が複数いる場合は、遺産分割協議が必要です。
誰か一人でも反対していれば売却はできません。
3. 売却前の準備・査定
地場の不動産会社に相談して、価格査定や売却戦略を立てましょう。
古家がある場合、解体費や更地渡しの要否も含めて判断を。
まとめ:名寄帳は“相続不動産の地図”
相続した土地の売却をスムーズに進めるには、まず名寄帳を取得して不動産の全体像を把握することが出発点です。
名寄帳は単体で完結するものではありませんが、登記簿・公図などと組み合わせて使うことで、相続不動産の“地図”として非常に役立ちます。
放置せず、必要な情報を整理し、信頼できる不動産会社や司法書士と連携しながら、一歩ずつ進めていくことが大切です。